その虚ろ

うらぶれた娼館の待合で私は金髪の自称生娘と長い話をしている。舞踏室と呼ばれる部屋に連絡する通路を行きつ戻りつする娼婦たちとその部屋に入ったきり出てこない男たち、燈る洋灯がちらちらと翳るのを見て金髪、あやしく嗤い「ねえさんがたは容赦がなくて…

消失に潜む

誰かの失われた記憶のなかに私は立っている。其処は煤けたマンションの一室で、襤褸の赤錆色のソファと傷だらけの机と背凭れの壊れた回転椅子、簡素で古びた本棚があるだけのごくささやかな部屋で、住人の気配や匂いといったものは特に感じられない。時折き…

リアリズム

仲良しの外国人の青年と一緒に大きな寝台ですやすや眠って、裏通りの寂れたゲームセンター前で詰襟の不良に鎖で打たれて、情報屋から女の子に関する情報を買って、寝室で青年に打たれたところを手当てしてもらって、夜の街で再び詰襟に会って、買ってきた情…

DITD

27時過ぎ終着駅は何処なんだろうなって薄汚い壁を見つめ茫とする、夢と現の間で -------------- 首に刺さった注射針接続部からもれるアルコールの匂いのたうつ女性の青白い脚ぼくの手には -------------- 04時44分ぼくの手には?(もう思い出せない) --------…