その虚ろ

うらぶれた娼館の待合で私は金髪の自称生娘と長い話をしている。
舞踏室と呼ばれる部屋に連絡する通路を行きつ戻りつする娼婦たちとその部屋に入ったきり出てこない男たち、燈る洋灯がちらちらと翳るのを見て金髪、あやしく嗤い「ねえさんがたは容赦がなくていけねえや」と男たちの末路を暗に告げる。

「殺される?」
「魂咥え込んじまうんだよ」
「死ぬね、それ?」
「器っきり残ってさァ、それってもう生きちゃァいねえだろう、なあ?」

支配人に呼びつけられた金髪と別れ、ひとり館内を散策していると突然目の前の扉が開き、中から若い男性が転び出てきた。見れば全身血塗れで、所々引っ掻かれたような傷がある。さすがに黙殺することもできず声を掛けると、「中の子が危ない、気が触れているから保護しなくては」
保護されるべきはあんただろう、と思いつつ部屋を覗くと口の周りを真っ赤にした少女が寝台に横たわっており、その姿を見て大体の事情を察した私は黙って踵を返そうとしたのだが、少女はそれを許さず、
「お客様、こちらへ」
と、おそらく扉の外で悶絶している彼から咬み千切ったのであろう局部を掲げ、うっそりと笑った。